Marketing Report <ボルボ社の企業戦略>

マーケティング レポート

  製品開発について<ボルボ社の戦略方針>

<企業戦略> ー ボルボ社の例 ー

世界に多様な種類に溢れている乗用車市場の中で、その際立ってユニークな特徴で評価され、売れ続けているボルボ社の乗用車について考えてみたい。乗用車の『中核的商品価値』は、言うまでもなく『個人のニーズに合わせて自由に地理的移動を行える交通移動手段』という事である。しかし、自動車の分野は初の量産商品であったT型フォード(1908年)以来1世紀以上の歴史を持ち十分に成熟した市場の商品であり、単なる個人的交通移動手段という自動車のコア的価値のみでは、全く勝負出来ない。したがって、世界中の様々な自動車メーカーは、この中核的顧客価値に付加する様々な実態製品、拡張製品の面で、ありとあらゆる工夫をこらして、激しい競争を続けている。その形は多様で、高級車としてのブランドを確立し、特定のセグメント顧客にターゲットを絞る会社もあれば、派手なスタイリングと高速走行性能を訴求するメーカーがある一方で、環境への負荷に配慮したエコやクリーンさをアピールする会社があり、また、従来の自動車業界とは全く別のIT業界から参入し、得意のAI技術を応用した自動運転技術を売りにして、急激に売り上げを伸ばす会社もある。

その中で、ボルボ社は、その長い社歴の中で一貫して『安全性能』にこだわり続け、そのための技術開発分野において、常にトップランナーとして業界をリードし続けて来た。同社のホームページには「1927年、ボルボの創設者が当社のコアバリューの1つとして安全性を重視することを決定し、それ以降ボルボは安全技術におけるリーダーとして取り組んできました。これは今後も変わることはありません。」と書かれている。

また、本年、同社が1969年間に開発した「自動車の安全性に関する歴史上で最も重要な発明である3点式シートベルトの誕生から60周年を迎える」ことをホームページでも公表し、同社の商品の誇るべき特質としてアピールしている。(https://www.vcj-press.jp/pressrelease/20190322-1

同社の乗用車の全てに通じる特徴として、その強固な躯体構造は、有名である。それだけではなく、3点式シートベルト、子供用ブースター・クッション、SIPS(側面衝撃吸収システム)といった安全性に関するイノベーション的技術も同社が開発したものである。

https://www.volvocars.com/jp/why-volvo/human-innovation/safety 

   私自身、約20年前初めて国産車から同社の商品に乗り換え、その後同社の車に乗り続けているが、その際の決め手は、やはり、その高い安全性能に惹かれたことにある。たまたま知人が居眠り運転でトラックと衝突し、乗っていたボルボ車は大破したがドライバーの知人はほとんど無傷だった、と言う話を本人から直接聞いて、車にとってステイタスや高速性能や燃費等、どの要素よりも安全性が重要だと思ったからである。

このように、どれほど競争の激しい業界であっても、消費者に強く訴求する明確な顧客価値を持っている商品は、その価値を理解し、これを重視する顧客の根強い支持を受け、ロングセラーとなる商品を生み出す事が出来る。

投稿者:

matsuga_senior

《松賀正考》大阪大学外国語学部英語学科、歯学部卒業。明石市で松賀歯科開業。現シニア院長。 兵庫県立大学大学院会計研究科卒業。同大大学院経済学研究科修士課程卒業、博士課程在学中。