『日本美術の鉱脈展』(中之島美術館)

2022年2月2日の開館初日に訪れた中之島美術館(その時の投稿はこちら)には、その後も何度か訪問していますが、現在、『日本美術の鉱脈展 ー未来の国宝を探せ!ー』と言う興味深いタイトルの企画展が開かれているので、厳しい残暑に包まれた中之島を久しぶりに再訪してみました。

平日の午前中にもかかわらず、かなり多くの人が訪れており、この企画展の人気ぶりが伺えました。

今回の企画展の目玉は、何とあの江戸時代の二人の天才絵師、円山応挙伊藤若冲の合作作品が昨年、発見された、ということで、その言わば世紀の大発見の展示がまずメインでした。

美術史家の山下裕二・明治学院大学教授と大阪中之島美術館が2024年10月2日、東京都内で発表したところでは、伊藤若冲と円山応挙がそれぞれ得意な鶏と鯉を描いた初の合作屏風が見つかったとのことで、山下教授によれば「驚くべき新発見」のようです。

新発見の二曲一双の屏風(伊藤若冲《竹鶏図屏風》、円山応挙《梅鯉図屏風》)は、左隻の若冲が鶏、右隻の応挙が鯉と、それぞれがもっとも得意とした画題を描いています。

若冲と応挙は江戸時代の京都で1、2を争う人気絵師でしたが、二人の交流はほとんど無かったとされ、記録上は応挙が若冲を訪ねたものの留守だったという1回のみ。この屏風は、「おそらく発注者が金屏風を仕立て、若冲と応挙それぞれに画題を指定して依頼したのだろう」と山下教授は推定しているそうです。(参考記事はこちら

この新発見の作品をじっくり鑑賞させてもらいました。

それ以外の応挙や若冲の作品、さらには、室町時代から現代に至るまでの様々な名作も展示されていました。

(伝 岩佐又兵衛)妖怪退治図屏風《江戸時代》
(白隠慧鶴)大黒天鼠師槌子図《江戸時代》
(狩野一信)五百羅漢図《江戸時代》

これとは、全く対照的な縄文時代のどこかコミカルなデザインの土器も『未来の国宝』の候補として展示されていました。はるか何十世紀を超えた2つの作品には、直接の関係は何もありませんが、日本の連綿たる歴史と美術文化の長さと奥深さを感じます。

人体文様付有孔鍔付土器《縄文時代中期》

戦災によって焼失したと思われ、現在では小さな白黒図版のみが残る若冲の屏風を最新のデジタル技術と学術的知見の融合で復元されたと言う興味深い作品の展示もありました。

今回の企画展を総括して思うのは、《新発見の応挙・若冲の合作作品》と言う目玉作を中心に、様々な時代の特徴ある作品をバランス良く配置した見やすい展示会だったという事です。音声ガイドも要領良く分かりやすいものでした。会場に着いてから見終わるまで、1時間少々というボリュームもちょうど集中力が続く適度なものだったと思います。会期が8月末で、あまり日数はありませんが、機会があればお勧めできる企画展だと思います。

投稿者:

matsuga_senior

《松賀正考》大阪大学外国語学部英語学科、歯学部卒業。明石市で松賀歯科開業。現シニア院長。 兵庫県立大学大学院会計研究科を卒業し会計専門修士。さらに同大大学院経済学研究科修士課程を卒業。その修士論文で国際公共経済学会の優秀論文賞を受賞。現在、博士課程在学中。