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当院の長年にわたる提携技工士の山口君についてのお話をします。彼と初めて会ったのは、平成元年ですから、当院の技工パートナーとしてのお付き合いは、30年を超すことになります。当時、私は開院7年目を迎え、地域の皆さんの信頼も頂き始め、診療は多忙を極めかけた頃でした。阪大の先輩から電話がかかり「今、阪大の付属技工士学校で教えてるんだけど、今年卒後研修科を出る学生で、すごく仕事の出来る子がいるんだ。人柄もいい学生さんで、先生の診療所の近くの出身なんで、どうかな」と言うことでした。我々の仕事にとって、技工士さんは、決定的に重要なパートナーです。我々の仕事は、いい連携を取れる技工士さんがいて初めて成り立つと言っても過言ではありません。想像してみて下さい。あなたの診療を担当する歯科医師が、優しく分かりやすい説明をしてくれ、的確な診断を元に納得のいく治療計画を提示し、素晴らしい神技のようなテクニックで痛みもなく歯を削り、申し分のない綺麗な型取り( Cerec では不要ですが)をしてくれたとします。ところが、その模型を受け取った技工士が未熟で不熱心でガタガタの修復物を作ってきた、としたら?それでまともな治療が成り立つでしょうか、、。

技工士学校の正規課程の2年を終えて、さらに1年の研修科に進むほど研究熱心で、しかも、その指導教員からお墨付きを貰えるような人材は有り難いことだと、数日のうちに面接後、直ちに当院で勤務頂くことにしました。先輩の推薦の通り、仕事ぶりは、着実、丁寧で、安心して任せられるもので、数年後には、当院の技術水準を維持し向上させるには不可欠な技工パートナーになっていました。

彼の何より素晴らしいところは、彼が歯科技工の仕事を天職とも感じ、文字通り寝食も忘れるくらい仕事に取り組み、常により高度な技術、新しく開発された技術の研究や研鑽に励んでいることでしょう。それにしても、つくづく思うのは、人間にとって、三度の飯より、、と熱中出来る仕事に出会えることほどの幸せは中々無いのではないでしょうか。自分の好きな事に熱中している間に、その分野に関する様々な経験と広い知識が身についていき、仕事は深まります。目前の仕事に集中することが、そのまま、その人の生き甲斐となり、心と生活の充実につながるのです。経済的成果は、求めずとも自ずと付いてきます。彼はそういう「天職」を見つけた幸せな人種の一人でした。診療が終わった後、対応の難しいケースについて様々な相談をし、ディスカッションを重ねる日々が続きました。彼は真剣に、しかし、楽しげに、様々な試行錯誤を繰り返しながら、問題を解決していってくれることが何度もありました。最初は標準的な保険給付の範囲のケースを中心に仕事をしてもらっていましたが、いつの間にか、難しい対応や検討を要する自費範囲のケースも彼に任せることが着実に増えていきました。彼が当院で働き始めて7年後、新診療所を建築する計画の中には、彼に仕事をしてもらうスペースは、当然のこととして、準備しました。高度な技術を要するセラミック関連の仕事もいつの間にか研究を重ね、難症例もこなせるようになっていました。彼の仕事場には、各種の専門雑誌が溢れ、厳しい日々の仕事をこなしながら、彼が黙々と研究を重ねていることが想像出来ました。
(下の写真は、素晴らしい彼の仕事の一例です。)

  

開業後20年を過ぎた21世紀が始まったばかりの頃、私が新たな挑戦分野として、インプラント治療に取り組み始めた頃、彼は私と併走するように、インプラント技工分野の研究を重ね、難しいケースも協力して対応してもらうことが何度もありました。いや、彼の技工技術力で問題を乗り越えたと言うべきケースも数多くあったと思います。

その後、彼の家庭的事情もあって、彼は実家に広い仕事スペースを構えて、形の上では「山口デンタルラボ」として独立することになりました。しかし、当院との緊密な連携関係は全く変わらず、当院の仕事をしっかり下支えしてもらう日々が続きました。

ちょうどその頃、私はセラミック修復技工の革新的設備としてCAD/CAMのCerec System の導入に踏み切りました。これは、外面だけから見ると、セラミック技工をマシンとコンピュータによって大幅に自動化、合理化するものであり、その分、技工士さんへ依頼する仕事量は減る可能性があります。一般企業の世界で進むFactory Automation による熟練技術者の合理化が、この世界にも波及して来るか、とも思えました。しかし、彼には動揺の様子は見られませんでした。標準品的な仕事のレベルを遥かに超える高度なレベルの技術を彼は既に蓄積していたからです。「コンピュータ+マシンでこなせない仕事は任せて下さい」と動ずることは、いささかもありませんでした。

それどころか、その後、逆に彼の方から「実は、従来のセラミック加工技術とは全く違うコンセプトの Zirkon zahan というシステムがあって、注目しています。僕は絶対に実用的技術として使えると思ってます。ただ、未だ日本には本格的には入ってなくて、それを導入するには現地に行って開発した会社に行ってみる必要があると思うんですが。」と言うような事を言いだしました。どの国なの?と聞くと、何とイタリア北部のスイス国境近くのいわゆるチロル地方だと言います。私には初耳の話で、どんな技術やら見当もつきません。ただ、それまでの長い付き合いの中で、彼の人柄や考え方を充分分かっていた私は彼の真剣な表情と目の光を見て、これは間違いないな、彼の判断を信じてみようと思いました。
ちょうど、その頃、私は、ドイツの国際デンタルショーにも一緒に行った若い友人歯科医と共に、モナコというセレブなお国で開かれるヨーロッパ=インプラント学会(EAO)に参加する計画を立てていましたが、モナコがいかに珍しい異国であるとしても、高額な飛行機代を払ってピンポイントで往復するだけでは余りに勿体ないので、イタリアを経由して数日イタリアの地も訪れることを検討していたところでした。それで、この二つの計画を合体させようか、と言う話になりました。イタリアまで一緒に行き、そこで、モナコとチロルに別れるということになりました。

    

では、彼が注目したと言うZirkon zahan とは、どんな技術だったのでしょう。またしても、長くなってきたので、稿を改めることにします。

彼と連携するセラミック修復治療については、こちらをご参照下さい。

<以下は、ローマ・フィレンツェからモナコでの学会までのフォト・ギャラリーです。南欧風景で一息ついて下さい。>

松賀歯科 シニア院長
                                   松賀 正考


(ローマで宿泊したホテルはHPでは高級リゾートホテルを謳っており、料金も立派でしたが、実態はまあ民泊宿。観光地ローマの面目躍如。)

 

(コロッセオ周辺 ローマ時代の『甲子園』はさすがに規模壮大)

 

(バチカン大聖堂 その巨大な規模と荘厳さは圧巻)

 

(ローマ中心の旧蹟の一つ フォロ・ロマーノ)

 

(花の都 フィレンツェ)

 

(ローマ市街の風景)

 

(カンツォーネのライブが聴けるレストラン『 Thalia 』の一夜)

 

ローマからニースまでは航空便がありますが、そこからモナコへは、バスか乗合ヘリしかありません。珍しいヘリ搭乗体験をしました。

 

モナコは、さすがセレブのお国、同行の若手歯科医と食べたスシの値段の高かったこと!モナコでスシを食べること自体が間違ってるんですが、同行の若手歯科医(香川県ソフィア歯科 上里先生)が、高級ホテルで食べたナマっぽいタルタルステーキで食あたりして、1日寝込み、彼がどうしても和食を食べたかったのです。
彼とは、ドイツでのインプラント学会参加や専門医資格取得で苦労を共にした仲間で、デュッセルドルフ、ミュンヘン、ハンブルグ、などへの旅も楽しんだよき旅仲間です。
前稿で書いたケルンでの国際デンタル=ショー(IDS )への参加(こちら)も彼と二人旅だったのですが、上里ドライバーの運転でアウトバーンをすっ飛ばし100Km以上の速度で走っているのに、後ろから煽られて青ざめたり、ドイツ語しかしゃべらないカーナビの案内で道に迷ったりと、いろいろ弥次喜多道中の思い出があります。

    

  

一応、学会(ヨーロッパインプラント学会)参加ツアーでしたが、上里ドライバーとモナコ=グランプリのコースをベンツ(! ただし、ミニカーのような A-1 )で失踪、じゃなくて、疾走する、など楽しみました。

 

モナコで開かれたヨーロッパ=インプラント学会( EAO )

 

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